5分でわかる配偶者控除の基本

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stevepb / Pixabay

配偶者控除とは扶養控除の一種であり、配偶者がいる納税者に対し一定の配慮をするという考え方で設計された制度です。夫婦であり生活を一にするなどの条件を満たすと、年末調整の際、夫の収入に対し38万円が控除されるものです。

政府は配偶者控除の見直しを検討していますが、配偶者控除とはそもそもどのようなものなのか、誰にでもわかりやすく解説します。

配偶者控除額の要件

配偶者控除をうけるためには以下の要件を満たす必要があります。

①民法の規定による夫婦であること

「民放の規定による夫婦」とは、国に認められた夫婦という意味のため、婚姻届を役所に提出した法的に成立した夫婦であることが必要です。よって内縁関係の方や事実婚の方は夫婦としては認められていません。

②生計を一にしていること

「生計を一にしていること」とは、主たる納税者(多くの場合夫)と同じ生計で暮らしていることという意味のため、夫の給与等で生計を立てていれば、同居や別居は問われないことになります。親の病気や単身赴任、通勤時間の関係で別の場所に住んでいたとしても、生活費は夫から支払われている場合同一の生計とみなされます。

③事業専従者の給与がないこと

夫が自営業を営み、そこで働く家族従業員のことを事業専従者といいますが、妻が夫の会社で働いて給料をもらっている場合は配偶者控除の対象外となります。

家族経営の場合は、配偶者控除を受けることが難しいため、税金の壁である103万円ではなく社会保険の壁である130万円を意識して所得を考える必要があります。

④妻の合計取得金額が38万円以下であること

妻の合計所得金額が38万円以下である必要があります。「合計所得金額」とは、アルバイトやパートの「総所得」から、給与所得者全ての方に適用される「給与所得控除」の65万円を引いた額のことを指します。

合計所得金額 = 総所得 ー 給与所得控除(最大65万円)

つまり、1年間の総所得が103万円を超えると合計取得金額が38万円を超えてしまうため、配偶者控除の対象外となります。

2017年税制改正で検討されていること

<妻の年収上限の拡大>
給与所得のある妻の総所得上限を103万円から150万円とすることが検討されています。

<配偶者控除額の縮小>
38万円の控除額を34万円に減額することが検討されています。

<夫の年収上限の設定>
夫の収入が1120万円を超えると控除額が段階的減り、1220万円になるとゼロになることが検討されています。

配偶者控除による控除額について

配偶者控除といえば38万円の控除を連想される方も多いですが、給与所得者の税金は所得税と住民税という2種類の税金がかかり控除額は異なりますので注意が必要です。

所得税:控除額 38万円
住民税:控除額 33万円

「控除額」とは、夫の総収入に対し課税対象から外すという意味ですので、上記の額がそのまま戻ってくるわけではなく、控除額に所得税・住民税それぞれの税率を掛けた額が還付されることとなります。

つまりは、夫が年収500万円の場合、所得税が20%、住民税が10%となりますので、以下の金額が戻ってくることとなります。

所得税:還付額 76,000円
住民税:還付額 33,000円

妻の年収103万円以下の誤解

ここまで配偶者控除をうける条件として、妻の年収が103万円以下という表現を避け、合計所得金額という表現をしてきました。確かに、夫がサラリーマンで妻がアルバイトやパートタイムの場合はこの103万円という条件に合致する家庭は多いですが、税法上は妻の合計取得金額が38万円以下であることが要件となります。なぜこのようなわかりにくい表現なのでしょうか。

妻の所得が給与所得の場合は年収103万円以下

所得税は、収入から必要経費(所得控除など)を差し引いた後の金額をから算出します。アルバイトやパート、会社勤めによる収入は税務上「給与所得」という所得区分にあたるため、年収103万円の場合は所得控除65万円を引いた38万円が合計取得金額となります。

103万円(給与の収入金額)-65万円(給与所得控除)=38万円(合計所得金額)

妻の所得が公的年金の場合は108万円か158万円以下

妻の収入が公的年金であれば、1年の収入金額の合計から「公的年金等控除額」を引いた額が38万円以内であれば、配偶者控除の対象となります。公的年金等控除額は、年金受給者の年齢が65歳未満と65歳以上とで次のように分かれます。

65歳未満 最低70万円
65歳以上 最低120万円

よって、妻が65歳以上で158万円までの公的年金受給者であれば、夫は配偶者控除を受けることができます。

158万円(公的年金の収入金額)-120万円(公的年金等控除額)= 38万円(合計所得金額)

3種類ある「扶養」を混同しない

配偶者控除とは扶養控除の1つであるということでこれまで説明してきましたが、世の中で使われる「扶養」という言葉にはあと2種類の意味がありますので、混同しないよう注意が必要です。

社会保険法上の「扶養」

妻がアルバイトやパートタイムで年収が130万円を超えると、130万円は社会保険の壁と言われるように、社会保険(健康保険、厚生年金)の負担義務が生じます。

税法上の扶養が「控除対象配偶者である」ことを指す一方で、社会保険法上の扶養は「(国民年金の支払い免除となる)第3号被保険者になる」ことを指し、同じ「扶養」という言葉でも、財務省と厚労省により全く別の意味をもつことになります。

なお、平成28年10月から新たに106万円の壁というものができました。大企業に週3回以上務める方は、年106〜130万円の取得であっても社会保険を負担する可能性が高いので、注意が必要です。

夫の会社の規定による「扶養」手当

大企業を中心に扶養家族(妻や子供)の人数に従い「扶養手当」が支給されていることがあります。この扶養手当は、法律で定められていませんので、妻は扶養手当に該当しないとか、そもそも扶養手当自体がないという会社もあります。

扶養手当が存在する場合は、ほとんどの会社が就業規則でどの条件でいくら払うかを定めていますが、税法上の年収103万円か、保険上の130万円を境に、5,000~15,0000円程度金額が支払われることが多いです。

まとめ

税法上の配偶者控除をまとめましたが、「38万円」という数字や「扶養」という言葉に複数の意味があることをご理解いただけましたでしょうか。配偶者控除の見直しが検討されている今、足元の制度をご理解いただいた上で、家庭全体として損をしない対策を取る準備を進めていただければと思います。

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