保険といえば「生命保険」と言われるほどポピュラーな商品ですが、「生保の方からおすすめされるまま加入している」「見直しをしたいがどのようにすればいいかわからない」「色々な商品があり難しい」など、難しい商品と思い込まれがちです。
人生で一番大きな買い物は家を買うこと、2番目に大きな買い物は生命保険とはよく言われます。2番目に高額な商品を、難しいということを理由に見直しを見送るのは、いくら他の金融商品で資産運用したところで、大きな穴が開くことになります。
生命保険の設計は、日々の支払いは最小限、不測の事態に備え最小限の保険金、というポイントを押さえることが重要です。自分に合った「生命保険」を選んでいただくために、基本的なことをわかりやすく解説します。
目次
生命保険は3種類のみ
生命保険は大きく分けて「定期保険」「養老保険」「終身保険」の3種類しか存在しません。この3種類の保険に色々な特約を付加することで、数多な商品が販売されていますが、「定期保険」「養老保険」「終身保険」の基本さえ抑えれば、生命保険はほぼ理解できるものとなります。
定期保険とは
保障期間を契約時に定め、契約終了時の返戻金のないタイプの生命保険です。つまりは、掛け捨てタイプの保険となりますが、月の保険料が安い割に受け取る死亡保険金の額が大きいため、一家の大黒柱など、経済的に責任が重い方の、万一のときの資金を確保するといった目的に適しています。
養老保険とは
保障期間を契約時に定め、満期時に死亡保険金と同額の満期保険金が支払われるタイプの生命保険です。貯蓄を目的とする保険となりますが、満期保険金と、死亡保険金が同額という変わった保険です。被保険者(保険の目的となる人)が亡くなった場合、契約成立翌日から目標金額(満期保険金)を死亡保険金として受け取ることができます。貯蓄性があるため月々の保険料が高く、契約後数年間は元本割れしますので、余裕を持った設計が必要です。
終身保険とは
保障期間が終身、つまりは一生涯保障され、掛け捨てではなく貯蓄性のあるタイプの保険です。生命保険はもともと定期保険と養老保険のみだったのですが、日本人の平均寿命が伸びたことにより、老後を迎える前に保険期間が満了してしまうことのないよう販売されはじめたのが終身保険となります。養老保険が一定期間(15年とか20年とか)と短い一方、終身保険は30歳で加入し80歳で死亡したとすると50年という長期に渡るため、保険料は養老保険よりも割安となります。
人気商品も3つの保険の仲間
CMなどでよく紹介される学資保険や、保険料の割安さから定解約型終身保険や収入保障保険は特に近年人気の商品となっていますが、これらの商品は全くの新しい保険ということではなく、あくまでも3つの保険商品から派生し作られた商品となりますので、その仕組みを紹介します。
収入保障保険は定期保険の一種
収入保障保険とは定期保険の一種であり、保険金が毎月お給料(収入)のように支払われることから「収入保障」呼ばれているタイプの定期保険です。月10万円が保険金として払われる商品で30歳で契約したとすると、生存していたら60歳までの期間、毎年10万円の保険金が家族に支払われます。つまりは、40歳で死亡すれば、総額2400万円(10万円×12ヶ月×20年間)の保険金ですし、50歳で死亡すれば、総額1200万円(10万円×12ヶ月×10年間)の保険金となります。
定期保険が10年ごとに契約更新されるのに比べ、収入保障保険は契約時に60歳まで定額支払いの契約をするため、契約の更新による保険料の値上げを回避し、無駄な保険料の支払いを防ぐことができる商品となります。この収入保障保険の1番のメリットは、保険料が割安であることなのですが詳細は以下のページにて紹介しています。
学資保険は養老保険の一種
学資保険とは養老保険の一種であり、子供の教育費などに掛かるお金を補助することを目的とし、教育資金が必要になると予め設定した時期に、祝い金や満期学資金として、給付金をまとめて受け取ることができるタイプの養老保険です。よって、子供がいなければ加入することができませんが、支払い方法を工夫する等により20年で1.2倍程度の給付金が得られるため、銀行に預けているよりも利息が多く付くものとして人気の高い商品となります。
保険会社にとっては、自社の他の商品に加入いただくためのエントリー的な商品となりますので、満期金はかなり優遇されていることが多く、お得感は大きい商品です。学資保険の代わりに後述する低解約返戻金型保険で代用するという方法もありますので、詳細は以下のページにて紹介しています。
低解約返戻金型保険は終身保険の一種
低解約返戻金型保険とは、終身保険に比べ、加入から数年間は通常よりも解約返戻金が少なくなる(解約すると損が大きくなる)代わりに、割安な保険料で加入することができるタイプの終身保険です。払込期間修了後は、終身保険と同じ解約返戻金の水準に戻るので、長期で持つのであれば、保険料が割安な分返戻率が高くなります。払込期間中は解約返戻金が少ないため、短期間で全ての保険料を支払うことができれば検討に価する商品です。
生命保険は本当に必要か
生命保険は、家の稼ぎ頭を失った際に、葬儀等の費用や家族が安定して生活を送るために加入が必要なものです。よって、未婚者の場合は数百万円程度、夫婦子供なしの場合は1000万円程度、子供が生まれた場合1人あたり数千万程度が必要となります。現金が十分にあれば保険に加入する必要はありませんが、まず、保険金以外にどのような収入があるのか、将来にわたりどの程度のお金が必要なのかを適切に把握することが重要です。
保険以外の収入①:遺族年金
遺族年金とは、被保険者が死亡したときに、残された遺族に対して支給される公的年金です。遺族年金の支給額は、加入している社会保障制度・家族構成により、受け取れる金額が異なります。いかにモデルケースをお示ししますが、この額は遺族基礎年金+遺族厚生年金の総額となります。なお、平均標準報酬月額とは年収を12月で割った数字とお考えください。
平均標準 報酬月額 |
配偶者 のみ |
配偶者 +子1人 |
配偶者 +子2人 |
配偶者 +子3人 |
20万 | 2.4万 | 10.8万 | 12.7万 | 13.3万 |
30万 | 3.6万 | 12.0万 | 13.9万 | 14.5万 |
40万 | 4.9万 | 13.3万 | 14.5万 | 15.7万 |
50万 | 6.1万 | 14.5万 | 16.4万 | 17.0万 |
60万 | 7.3万 | 15.7万 | 17.6万 | 18.2万 |
サラリーマン、公務員(単位:円)
平均標準 報酬月額 |
配偶者 のみ |
配偶者 +子1人 |
配偶者 +子2人 |
配偶者 +子3人 |
20万 | 0 | 8.3万 | 10.2万 | 10.8万 |
30万 | 0 | 8.3万 | 10.2万 | 10.8万 |
40万 | 0 | 8.3万 | 10.2万 | 10.8万 |
50万 | 0 | 8.3万 | 10.2万 | 10.8万 |
60万 | 0 | 8.3万 | 10.2万 | 10.8万 |
自営業者(単位:円)
保険以外の収入②:住宅ローンの団体信用生命保険
一般的に住宅ローンには団体信用生命保険が付帯されているため、契約者が死亡した場合は住宅ローンの支払いが免除されます。よって住宅を購入した方は、生活費としての住宅ローンは除外することができます。
保険以外の収入③:会社の福利厚生
社員が死亡したとき、会社から遺族に対し死亡退職金や年金が支払われるケースがあります。詳細はお勤め先までお問い合わせ下さい。
家族が将来にわたり必要な額
葬儀費用、家族の生活費、子供の学資、自家用車の購入費用があげられます。高校や大学の費用は高額でありかつ短期間に必要となりますので、これらへの備えが必要です。
生命保険の設計方法
これまで説明してきたことを簡単に1つの表にまとめました。葬儀費用や老後に向けた資金は終身保険で確保し、子供の学資費用は学資保険(養老保険)もしくは終身保険(低解約返戻金型保険)で確保、家族の生活費は遺族年金と住宅ローン免除相当額に加え、足らない額を定期保険(収入保障保険)でカバーすれば、残された家族に迷惑をかけることはないのです。
医療保険の考え方と、実質0円で加入できる商品は以下のページで紹介していますので是非ご一読ください。


具体的な商品選択については、詳細は以下のページにて紹介しています。
まとめ
生命保険は少し勉強することで、医療保険のような掛け捨て型タイプの保険と合わせても実質支払い総額を0円にすることはそれほど難しいことではありません。会社などに来る大手保険会社の商品は、人件費というマージンが掛かりますのでどうしても割高になりがちです。ネットでは、詳細な契約金額や契約条件を開示していない保険会社も多いです。まずはご自身で保険を設計いただいた上、複数社からの提案を受け、損しない保険加入をを目指していただければと思います。