日銀は、17日、あらかじめ決められた価格で国債を無制限に買い入れる指値オペを金融機関に通告しました。この「指値オペ」発表と同時にドル円相場は上昇に転じ、円安ドル高がすすみました。
そもそも指値オペとはどういう仕組みなのか、なぜ為替相場が円安ドル高に動いたのか、今後の株価や為替、経済に与える影響はどうなるのか、極力わかりやすく解説します。
国債とは
国債とは、国家が発行する債券であり「国の借金証書」のようなものです。国債は販売時に、いつ(満期(償還日))、いくら返すか(額面)を設定するため、例えば満期10年・額面100万円の国債なら、発行から10年後に100万円のお金が国から返ってくるという仕組みです。
この10年の間は、お金を貸した対価として国から利息を受け取ることができます。この利息は表面利率(クーポンレート)と呼ばれ、年2回の利息が支払われます。
また、国債は投資家間で売買されますが、例えば、額面100万円の国債を買いたい人が多い場合は100万円の値段、逆に国債を売りたいという場合は99万円という値段で取引されるものと理解ください。
国債の利回りとは
額面100万円、償還日が残り1年間、表面利率が1%という国債で説明します。
償還日とは国が額面分の借金を返す日を示すため、額面100万円の国債が償還日を迎えると国から100万円のお金が返ってくることを示します。
仮に国債人気が低い時期に99万円で購入したとすると、1年後には利息1万円を加えて101万円の価値となり、99万円が101万円に増えるため、102.02%増えることとなります。よって国債の利回りは2.02%となります。
逆に国債人気が高い時期に100万円で購入すると、1年後には上記の考え方と同様101万円の価値となりますので、101%増えたこととなります。よって国債の利回りは1%と表現します。
このように、利息と売買益を償還年で割ったものが「国債の利回り」と呼ばれるものです。
景気と国債の利回りとの関係
国債の人気が高い時期とは、一般的には不景気など経済活動が停滞している時や世界情勢が不安定な時です。このような時は、利回りは少なくても安全に資産を増やすことができる国債を購入したい時期であり、国債を購入したい方が多いということは、市場での販売価格は高くなります。よって、国債の利回りは悪くなると考えて下さい。
かたや、国債の人気が低い時期とは、経済活動が活発となり株式や設備投資などにお金を充てたほうが利益を上げることができる時期です。国債を売却したい方が多いため市場での販売価格は低くなります。よって、国債の利回りは良くなります。
このように、景気が悪いと利回りは悪くなり、景気が良いと利回りは良くなるということになります。
10年物国債と金利との関係
我が国では償還期間が10年間の長期国債の利回りが、長期金利に反映されます。この関係性を説明します。
景気が良くなり国債の人気が低くなると利回りは上がると前節で説明しましたが、もし金利が低いままだと低利でお金を借り、高い利回りの国債を購入するということができてしまいます。誰もが儲かるようなことは起こり得ないため、国債の利回りが上がることに連動して、長期金利は上がるという仕組みとなります。
このように、金利が上がると国債の利回りが上がる(販売価格が下がる)、金利が下がると国債の利回りが下がる(販売価格が上がる)という関係になります。
指値オペとは?
日銀は平成28年9月政策決定会合において、国債買い入れの目安として短期金利をマイナス0.1%、長期金利(10年)を0%程度で維持する「イールド・カーブ・コントロール」を発表しました。この政策は、金利が上昇の傾向を見せた際、日本銀行が民間の銀行の国債を高く買うことで、結果金利を抑え込むというものです。
低金利で利息がつかなければお金を使う方が増え、経済活動が活発になるという新たな量的緩和の考え方の1つです。
今般のトランプ相場は、金融の規制緩和を期待した米金利の上昇をきっかけとした株高により、日本株も上昇しています。株価が上がると経済の好転を期待して日本の金利も上昇圧力が徐々にかかってきましたが、これを抑えるため、中短期(2年、5年)の日本国債を高く買うという発表が日本銀行から通知がされました。これにより、一時的に金利上昇は抑え込まれましたので一定の効果があるものと思われます。
指値オペによる為替への影響
指値オペ発表後、為替相場では円安ドル高が進みました。これは、米国の金利が上がる中、日本の金利はオペにより押さえ込まれ、日米の金利差が拡大したためです。
一般的に日米の金利差が拡大するとより高い金利の国に投資をする傾向になります。為替の世界では、日本からお金を引き上げ米国に投資するということは、円を売ってドルを買うこととなりますので、円安ドル高が進むこととなるのです。
まとめ
12月のFOMCの会合で米国の利上げが期待されていますが、日本は指値オペを実施したことにより今後も金利は低く押さえ込まれるだろうと市場関係者は見ています。よって、今後日米の金利差がさらに拡大する可能性があるため、更なる円安ドル高の可能性があります。110円まで数日で10円もの円安ドル高がすすみましたが、長期的に見れば、為替の上昇はまだまだ続くと考えるのが自然なのかもしれません。